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June 02, 2004

燐光群公演「屋根裏」

 劇団「燐光群」は設立直後から注目していました。美香が主演していたテンションの高い初期の作品から飛び飛びにしか見ていないので忠実な観察者とは言えませんが、節目の作品を目にしているので、流れはつかめているつもりです。ここに掲載した「屋根裏」は2002年に上演され、これらの作品で主宰者(作・演出)の坂手洋二がその年の読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞しています。

◎虚実すれすれ、緩急自在な世界

 劇団「燐光群」を主宰する坂手洋二の活躍がめざましい。毎年新作を劇団で上演するほか、他の舞台に作品を提供したり演出を手がけたり、休む暇がないように見える。社会を見据えたテーマで問題作を次々に繰り出す彼が、この夏取り組んだのは、5-6月に上演した「屋根裏」の追加公演バージョンだった(8月22日-28日)。

 幕開きの光景は異様だった。明るくなった舞台は壁のように塞がれ、そこに屋根裏の断面が穴のように空いている。壁にサインが書き込まれたオリジナルのユニット。個人の空間を求める人たちに売れた人気商品、という設定だった。ありそうでなさそうな、虚実すれすれの境界領域に物語が架橋される。特異な設定から力業でドラマを作り出す坂手ワールドの始まりである。

 その屋根裏で、5カ月も閉じこもった末に弟が自殺したという男性がまず登場する。レンタルだった屋根裏の管理人を問い詰め、制作者を割り出そうとする行動がオムニバス形式による物語の発火点となった。

 屋根裏に閉じこもる少女を訪ねてきた同級生の男の子が、やましい訪問動機をあばかれていきなりオナニーを始めたり、屋根裏に若い女を監禁している中年の息子とその母親が相互依存関係であることが明らかになったり、浮浪者風の男女が屋根裏ごと水中に突き落とされたり…。屋根裏ユニットもビルの屋上や公園の片隅をさすらい、最後にたどり着いた先は、若い兄弟がいる穏やかな作業場だった。

 製作者の弟と重度障害の兄。若い2人が働く静謐な世界から生まれた工作物が、かえっておどろおどろしい現実をめくりあげるように露出させ、どん詰まりと見えた場所を一転して心安らぐ空間に変える。緩急を心得たストーリーテリングの才能を堪能させてくれる2時間だった。

 俳優たちも粒揃い。とりわけ閉じこもりの少女を過激に演じた江口敦子の姿が印象深い。

 会場となった梅丘ボックスは、稽古場などに使ってきた劇団の拠点。数十人も入れば満員の小さなスペースだったが、その狭さを逆手にとり、「ブレスレス」で岸田國士戯曲賞、「天皇と接吻」で読売演劇大賞を受賞した坂手の実力のほどを見せた舞台だった。
 10月は劇団公演「最後の一人までが全体である」とプロデュース公演「阿部定と睦夫」など。予定が目白押しの売れっ子である。

(北嶋 孝@ノースアイランド舎、 初出「月刊ばんぶう」02年10月号)

Posted by : June 2, 2004 11:47 PM | Trackback
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