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June 02, 2004

うずめ劇場「いまわのきわ」

うずめ劇場の東京公演は2002年11月2-4日、東京練馬区の黒テント作業場で開かれました。当時の劇評を以下、再掲しますが、世界には恐るべき書き手がいるものだとあらてめて感じ入った次第です。

◎筋書きを逆にたどるオムニバス

 一筋縄ではいかない芝居を見せてもらった。スペイン・カタルニアの劇作家セルジ・ベルベルの「いまわのきわ」。彼の作品は国内で初めての紹介らしい。

 いったん語られた筋書きを逆にたどる意外性、ばらばらのエピソードを結び直す構成力、最後の最後にシニカルな結末を用意する批評精神。風変わりなオムニバス形式のドラマは、前半と後半では異なる場面に導き、登場人物の関係をさまざまに変奏する。曲がりくねった筋の枝葉に連なる私たちの関係のあり方を提示するとでも言うべきだろうか。見事な収拾と言うほかない作劇の力である。 まず7つの物語が前半の2時間で演じられる。

 事故に遭った人が見る光景を語る作家と聞き入る妻、薬物中毒の弟と入院させようとする姉、しつけで対立する母と娘、階段から落ちて骨折し入院した男性と看護婦、親戚に深夜の電話でお金を無心する孤独な老女、パトローカーに乗っている男女警官、帰宅した男と待ち受けた暗殺者…。

 ごく普通のオムニバス形式の舞台かと思っていると、後半の1時間は、7つ目の話から場面が逆にたどられ、ドラマは冒頭に向かって巻き上げられていく。

 暗殺者を捕まえたという警察への通報が男女警官を乗せたパトカーに届く。そのパトカーにはねられた男は、老女の息子。息子が担ぎ込まれた病室に隣り合わせだったのが骨折男で、娘が食べ物を喉に詰まらせたとき助けに飛び込んでくるのが退院した骨折男だった。麻薬中毒の弟を訪ねる姉が同行するのは、喉に食べ物を詰まらせた少女で、弟が自殺未遂で担ぎ込まれた病院は、作家の妻が勤務する病院…。前半とは異なる筋書きの下で、ばらばらのエピソードが糸をたどるように結びついていくのである。

 しかも前半の無造作な死は、後半の展開でさま変わりする。

 前半で殺される男が後半では神をかたって生き残り、病室で孤独死する骨折男が同室のオートバイ事故に遭った若い男とアルコール中毒の母親に助けられ、その骨折男が食べ物を詰まらせた少女を助ける…。

 だがすべてが生き残るわけではない。最初で最後のエピソードで皮肉な結末が用意される。夢を語る作家と、現実を直視せよとなじる妻を対比させながら-。

 演出は、第1回利賀演出家コンクールで最優秀演出家賞を受賞した東ドイツ出身のペーター・ゲスナー。彼はブレヒトやハイナー・ミュラーの伝統を生かし、北九州を拠点に劇団「うずめ劇場」を主宰する、いま注目の演出家である。

(北嶋孝@ノースアイランド舎、初出「月刊ばんぶう」2002年12月号)

Posted by : June 2, 2004 11:57 PM | Trackback
コメント

この公演、チケット買いながら流してしまったものです…。その後、横浜でみました。僕はちょっと唐さん風の印象を受けました。ちなみに、第2回のプライズを獲ったのが三条会の関美能留です。

Posted by: 松本和也 : July 18, 2004 12:53 AM