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September 12, 2004

龍昇企画「続・ああ無情」

 ストアハウスと提携した龍昇企画「続・ああ無情」公演が東京・江古田のストアハウスで開かれました(8月31日-9月5日)。舞台が始まってもライトは灯らず、闇の中で声明や祝詞を彷彿とさせる男たちのうなり声が響き渡る-。家族のきしみと悲鳴を予感させるアイデアに満ちたパフォーマンスでした。
 この公演を共同通信の中井陽さんに報告してもらいました。自分と触れあうリアルな叫びをステージから聞き取ったようです。

◎さらけ出される家族の軋み 自意識の殻を破って描く

 帰宅した「妹」が足を投げ出して座る。仕事も恋愛も何もかもうまくいかない。
 「疲れた…疲れた。なんだかわかんないけど…一生懸命やるのに疲れちゃったんだよ!」―。はじめはつぶやくように。最後は悲鳴のように、「祖父」に訴える。

 それを聞いていて、涙が出た。私は彼女を知っている。その台詞は俳優になる以前、演劇への想いが日に日に大きくなりながら会社勤めを続けた彼女が、実際に経験した感情に違いない。

 「ああ無情」は、役者が台本からすべて作っていくエチュード方式の芝居だ。会社でうまく働くことができない長男と、それぞれ問題を抱えつつ、彼を取り巻く家族の姿を描いた。

 駅前の果物店の上階にある小さな劇場。俳優たちは冒頭、顔をしわくちゃにして笑顔を浮かべ、観客席の前を無言でゆっくり横切る。観客席のすぐ前でライトに照らされてさらけ出される顔、顔、顔。見ている方は落ち着かない気分になる。

 舞台空間にあるのは、二脚の椅子だけ。父と母、長男とその妻、妻と二男、祖父と妹のように二人ずつ観客の前に姿を現し、対話する。家族に君臨しながら社会に居場所を見つけられないでいる長男、色っぽい長男の妻にほんろうされつつ、家族を想う二男。長年連れ添っているのにすれ違う父と母、祖父に当たり散らす妹…。

 演劇の上では、家族の関係を浮かび上がらせるための台詞が、ここでは役者の「素」の心をかいま見せるすき間でもあった。一つ一つが役者が自分をさらけ出した証しだから、おかしさや悲しさも、時に生々しい。

 母親が父親に言う。「あなた、私の目を見てしゃべってよ。あなたは昔からそうだった。出会った頃はなんて奥ゆかしい人なのかしらって思ったけれどずっとそうだったのよ」。父親はそれでも目をそらせてぼそぼそ話し、最後は怒鳴る。「うるさい!」。

 なぜ演じるのか。その問いに、出演者や演出家が背伸びせずに考えた。自分の悲惨な体験を皆の前で話してみる。お互いを本気でけなしあってみる。約三カ月のけいこは演出・企画を手掛けた龍昇氏のもと、まず普段まとっている自意識の殻を少しずつ破っていくところから始めたという。

 年齢も個性もばらばらな俳優たちが、今までの自分の人生の断片をそれぞれ持ち寄って、本物の感情で芝居の台詞を作った。見ていると、日常生活の中で、薄いほこりに覆われて見えなくなったものを再発見できる気がした。
(中井陽)


【構成・演出】龍昇
【CAST】直井おさむ
     米田 亮
     猪股俊明
     吉田重幸
     龍昇
     伊藤弘子(流山児★事務所)
     岩井さやか(流山児★事務所)
     桜井昭子
【会場・日時】江古田ストアハウス
  2004年8月31日(火)/19:30
      9月1日(水)/19:30
      9月2日(木)/15:00・19:30
      9月3日(金)/19:30
      9月4日(土)/15:00・19:30
      9月5日(日)/19:00

Posted by KITAJIMA takashi : September 12, 2004 12:25 PM | Trackback
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