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November 30, 2004

パラドックス定数「5seconds」

 東京の王子小劇場で11月初めから、佐藤佐吉演劇祭が開かれています(来年1月初めまで)。同劇場のサイトで「注目すべき作品・才能が集まった時にのみ開催」するとうたっていますが、「小劇場の青田刈りをするなら、今ここ(王子小劇場の演劇フェスティバル)に足を運ぶのが最も確実です」(踊る芝居好きのダメ人間日記)と言われるほど評判が高いようです。参加8劇団のトップは、1998年から活動している「パラドックス定数」の「5seconds」公演でした。1982年に実際に起きた羽田沖日航機墜落事故を扱い、生き残った機長と、真相を追う弁護士による2人芝居。力のこもったレビューが続きました。

 同劇場サイトによるとこのステージは「事故について口を閉ざす機長と執拗に追う弁護士。墜落直前の空白の五秒間、コックピットの中では何が起きていたのか。1999年初演の作品を大幅改訂しての再演。四方を客席に囲まれた、真っ向勝負の2人芝居」だそうです。

 「2人芝居ならではの緊張感に加えて男同士の机上の戦いはゾクゾクします。役者さんも達者です」と言うのは「しのぶの演劇レビュー」。さらに「パラドックス定数はこれまでにも実際に起こった社会問題や事件を題材に作品を作ってきたそうで、これからもその路線が続くようです。次回もぜひ観に行こうと思います」とエールを送っています。

 「Review-lution! on-line」は「一人一人の人間と社会の関係が置き去りにされる現代において、大事故の渦中に在る個人の葛藤にスポットライトを当てた『5seconds』は、『社会と個人の相克』という近代芸術の根本的テーマを内包した、いうなれば演劇の王道といっても良いのかもしれない」「演劇ファンのみならず、万人にとって必見の劇団」と述べています。

 生き残った機長より、相方の弁護士に注目するのが「休むに似たり。」です。「劇中現れる弁護士は、弁護団の中での『もっとも下っ端』。…会社という組織がどうやって個人を切り捨てていくか、その過程とともに、弁護団という組織の中での弁護士の位置がだぶります。どうやって、組織に抗っていくかという『ひと』の芝居なのだ」と分析します。

 この視点をさらに掘り下げ、劇構造に投影したのが「X-ray」の着想でした。「燐光群『CVR』と比較した初日評をいくつか読んで出掛けたせいか、へそ曲がりの私には、これを事件簿、社会派の芝居だと括り『いかに真実味があったか』という点だけで優劣を評価するのは、惜しいような気がした」と最初に見解を留保したあと、「全てが、弁護士・日向の独り言(=分裂した日向Aと日向Bの内面の対話)に見え、一人の人間の中にある様々な葛藤を、一見、対極にあって相容れないかのような大きな振り幅ながら、最後にある決断を持って収拾させるための、自身の投影=片桐であったように感じる」と述べています。この引用個所だけなく、ぜひ当該ページで全文をご覧ください。

 パラドックス定数は「ここ数年は社会派で重厚な作品を生みだしている。出演者は男性のみ。密室での会話劇。凄まじいほどの緊張感を孕んで進行する物語が特徴」(同劇場サイト)と言います。ことばを変形・解体するステージが最近少なくない中で、ことばに依拠し、ことばにこだわる本格的な会話劇は珍しくなりました。次回公演が楽しみです。


【上演記録】
■パラドックス定数「5seconds」
 2004.11.1-11.2, 11.8-11.9, 11.15-11.16 王子小劇場
 作・演出 / 野木萌葱
 出演 / 植村宏司・十枝大介

Posted by KITAJIMA takashi : November 30, 2004 11:21 PM | Trackback
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