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January 22, 2005

仏団観音びらき「女囚さちこ」

 「仏団観音びらき」という演劇ユニットが新春、新宿タイニイアリスで「女囚さちこ~ブス701号怨み節」公演(1月10-12日)を開きました。大阪を中心に活動しているようですが、今回は年末に大阪公演、年明けは東京公演と意欲的な活動展開です。インパクトのあるユニット名、包丁を持ってにらみつける怖そうな女性のポスターを見てひるむ向きがいるかもしれませんが、寄稿していただいた葛西李奈さんのレビューをまず読んでください。次回公演は出かけたくなるかもしれません。葛西さんは日大芸術学部在学中。これからも書いていただけそうです。(北嶋孝@ノースアイランド舎)

◎「笑い」共有、浄化作用もたらす 惨めさ、愚かさ、欲望に向き合って

 刃物を手にしている女性のインパクトに魅せられ、チラシを読むと

「ぶち破られた鉄格子!」
「ブスの怨みをたぎらせた、女囚さちこの『美女狩り』がはじまる!!」

 三秒後にこの芝居を観に行かなければという瞬間が訪れた。話題性や他者の評価に惑わされることなく、「この劇団の芝居を観たい!」と強烈に感じたのは久しぶりのことだ。
 劇団名は、仏団観音びらき・・・。ますます怪しい。聞けばシアターリパブリック主催の「E-1グランプリ」に出場し、旗揚げ公演前に大阪大会にて予選を勝ち抜き決勝進出した経歴を持つ劇団とのこと。気になって仕方がなくなってしまった私は就職活動後、氷のように冷えた空気に身を震わせながらふらふらとタイニイアリスを訪れた。

 私は潔い芝居が好きである。ここで言う「潔い」とは事実と真っ向から向き合おうとする姿勢のことだ。無意識に理想を追い求めて生きようとする私たちは、その理念に沿って動く社会に多かれ少なかれ希望を抱いている。ところが時折、ついていないと思い込んでいる傷口がひらき痛みが発せられる瞬間がある。私たちはその瞬間が一時性のものだと思い込み、生活を続けていく。その思い込みを取り払ってしまうと、あっという間に絶望の津波が押し寄せ、息をすることがかなわなくなるからだ。わざわざ波にのまれてまで苦しい思いをする必要はないから見ないようにしているだけのことであって、私たちは常に全否定という名のブラックホールを携えて生きている。

 仏団観音びらき「女囚さちこ」はそのブラックホールに飲み込まれた人々が大量に出てくる。扱われているテーマは「女性の美醜」だ。要するに「社会における美人とブスの扱われ方の違い」である。私は、女性の汚さ、いやらしさ、醜さを扱った芝居に目がない。つまりは自らの中にそのような感情が存在していることを肯定してほしいという気持ちのあらわれである。私が芝居を観続けている理由のひとつはこれ。「潔さ」に憧れているのだ。「女囚さちこ」は潔さの上に、さらに大阪特有のパワーを感じさせてくれる舞台だった。

 今回の公演「女囚さちこ」のあらすじはこうだ。
誰もがブスと罵らずにはいられない主人公、轟幸子(とどろき・さちこ)は満員電車の中で痴漢に処女を奪われる。駅員はさちこの被害の訴えを信じようとせず、他に被害を訴えてきた美女に対しては過剰なまでの応対ぶり。そのあまりの露骨さに怒りを覚え、さちこは反抗するが「黙れ!ブス!」と余計罵られるばかり。さちこは逆上し、美女を含めその場にいた合計五人を刺し殺してしまう。さちこは刑務所に入れられるが、そこは容姿の優劣で待遇が左右される仕組みになっていた。さちこは当然のように「ブス房」に入れられ、更なるいじめを受けることとなるのだが…。

 どうにも救われない物語である。紹介文だけではとても暗く、ねちっこく、いやらしい芝居の印象を受ける。私は舞台を出て行くときに肩を落とし無言になってしまうような作品の内容を予想していた。ところが実際、展開される物語は勢いづいていて、客席からは何度も大きな笑いが起こり、なにをかいわんや、私も声を出して笑ってしまっていた。

 女性が自身の汚さ、いやらしさを掲げて芝居作りをしている場合、過剰な自意識に呑まれて観客を二の次にしている印象を受けることがある。しかし、バカバカしい設定だけに留まらない笑いの作り込み方、大袈裟だけれど空回りせず場をおさえる役者の演技、所々織り込まれるダンスの美しさには荒削りだけれどもエンターテイメントとしての要素を提供する大阪人の気迫が感じられた。これは主宰であり、轟幸子役を演じた本木香吏の「『いるよね、こんなバカ』と嘲笑って頂き、ふと『もしかして私のこと!?』と気付いて頂きたい」という信念によるものだろう。

 確かにふと「私、どうして笑ってるんだろう」と思わせる瞬間が組み込まれている。ブラックジャックの手によって美しく変身したさちこが、自ら顔を傷つけるシーンには圧倒される。しかし、どちらかと言えばこのような問いかけをするほうが滑稽な気分になる。それは「まさにこの世は生き地獄」と歌いながら生き様を笑いにすりかえる姿勢があまりにもまっすぐで、健全だからだ。人間の惨めさ、愚かさ、欲望に真正面から向き合いながら、客席と「笑い」を共有することで浄化作用をもたらしている舞台を前にして、今更何を考えているのだろうという気分にさせられてしまう。おかしいのだからおかしい。何が悪い。仕方ないだろう、事実は事実としてあるのだから、おかしいのならば笑ってしまえば・・・。果たして、劇団側が意図したものに私自身がうまくハマっているかはわからないが、
「美醜に関係なく幸福な奴は幸福で、不幸な奴は不幸」
といういまだはびこる社会理念を明るくぶち壊してくれたこの劇団の、これからの可能性に期待大である。
(葛西李奈、2005.1.21)


[上演記録]
仏団観音びらき
 第3回公演「女囚さちこ~ブス701号怨み節

★作・演出=本木 香吏
★出演=本木 香吏 峰U子 水津安希央 ゆであずき 新井英彦 クスミヒデオ 松岡里花 西阪舞(劇団赤鬼) 大森都 藤原新太郎
櫟原将宏(大阪公演)・濱崎右近(東京公演)<ダンサー>兵庫江美・豊田文緒・近藤雪江・鎌田直美 他

■大阪公演(2004年12月8-10日、シアトリカル應典院)
■東京公演(2005年1月10-12日、新宿タイニイアリス)

Posted by KITAJIMA takashi : January 22, 2005 10:14 PM | Trackback
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