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March 10, 2005

東京ネジ「フロウフユウ」

 「東京ネジ」の第2回公演「フロウフユウ」が東京・王子小劇場で開かれました(1月27日-30日)。このグループは、盛岡を拠点に活動していた劇団ネジのメンバーら女性5人で2003年11月に結成。「佐々木」姓が3人、血液型AB型が3人だそうです(まとまりがいいのでしょうか?)。
 「デジログからあなろぐ」や「しのぶの演劇レビュー」も書いていますが、 
このほど小畑明日香さんから長めの公演評をいただきました。小畑さんは今春から大学生。フレッシュな目に、舞台はどう映ったのでしょうか。

◎思い出して嬉しく、ささやかに描かれて切ない

 座席に赴くと、アンケート用紙の上にマスクが置いてあった。
 王子小劇場の高さを生かして東京ネジが造ったのは、お洒落な2階建ての家の断面図だった。吹き抜けの1階とカーテンで客席から閉ざされた2階を、緩やかに曲がった階段でつないでいる。最近流行りの「暖かみのある建築」。気鋭のデザイナーが一枚噛んでいそうなデザインだ。
 それを見渡す客席の上に、マスク。「演出の関係上少々埃っぽくなりますので」そのときに使えと前説が入って、芝居が始まった。

 この作品の舞台は未来だ。ロボットが人間と共存しているし、世間では温暖化が進んで、この冬は46年ぶりに雪が降るとかでニュースになっている。
 しかしこの話の主役は、あくまでも自らの幸せを模索する人間達だ。そしてその願いを叶え、幸せをもたらしてくれる、ケサランパサラン。
 この生き物はとても小さく、ちょうど綿の塊の表面を八方に引きちぎって毛羽立たせたような形をしている。白粉を食べて増殖し、タンスの奥に隠しておくとその家を繁栄させる。そのため嫁入り道具の1つとして、母から娘に受け継がれていたらしい。ただし人に見られてしまうとそれまでの繁栄も全て失ってしまうので、なかなか広まらなかったんだとか。

 レビューを書くにあたって調べてみて、初めてこれが東北地方に伝わる伝説だと知った。東京ネジの前身である劇団ネジも、北東北を拠点に活動していた。

 オッシャレーな家のインテリア、山吹色の背の低い円柱の中に、増殖したケサランパサランがこっそり飼われている。母の所から盗んできたそれで娘のみつるが願うのは、自分の不老不死と、男女それぞれ1人ずつの子ども。女の子には数字に関する予知能力があって、みつるはその能力を利用し、ギャンブルで大儲けして毎日を暮らす。

 SF的な設定が時代背景に徹している点がいい。それでいて、登場する人物達はちゃんと未来に馴染んでいる。「具現人格」という精神病を患った女から具現化された人格が産まれてきてしまったり、寿命がきた旧式の世話係ロボットを廃棄できない青年がいたりする。

 現代に無い物をたくさん登場させると説明が難しくなるが、この作品はその処理も巧みだ。ケサランパサランのことを東京の人間に解説するために、みつると母に絵本を音読させる。

「しかしその間にもケサランパサランは増えつづけ、とうとうタンスからあふれて部屋中に広がり始めました。
 ああどうしよう、このままじゃ、ケサランパサランが見つかってしまう。
 女の子は必死で考えて、とうとう窓を開けて叫びました。
 ケサランパサラン、風に乗ってゆけ。
 ケサランパサラン、雪になって吹け。」

 増えすぎたケサランパサランは仕舞いに効き目を失って、山吹色の円柱から噴き出す。みつるの目の前で、2人の子どもも、引いては今までの歳月全ても失われてしまう。そして46年ぶりに町に降る、雪。

 この場面は本当に美しい。3つのシーンでそれが表現されるのだが、雪の表現の仕方が3つとも違うのだ。(1つは雪じゃなくてケサランパサランだけど)
 個人的にはぜひ、3つのシーンを連続して観てみたかった。暗転は一切無しで、曲も同じ曲を流しっぱなしにするか、シーンごとに変える程度にして。それまで舞台転換が巧妙だっただけに、ケサランパサランが噴き出すシーンの前の暗転が大変勿体無く思えるのだ。

 芝居全体では3回しか暗転しないのだが、クライマックスからラストシーンまでに暗転が続くので、妙に長く感じてしまった。仕掛けの都合上難しいのかもしれないが、もしこの作品を再演することになったら、ぜひクライマックスを連続で観せてほしい。

 3つの物語が巧妙に展開される「フロウフユウ」の魅力を、文章だけで伝えきるのは本当に難しい。娘と同じく不老不死になった母の、若い恋人とのベッドシーンのことを話すのは特に難しい。
 笑えるのだ。子供用のトランポリンぐらいしか大きさがない円柱の上を、
 「狼!」
 「子羊!」
 「(布団を被って)富士山!」
 「(男に寄り添って)チョモランマ♪」
 などと言いながら2人が走り回る。2人とも下着姿だし、小道具も布団だけ。(最後に母の恋人は煙草を吸う)動き回れるスペースも非常に狭いのに、多彩な表現に意表を衝かれた。ものすごく可笑しいのに品が良くて、2人の愛情の深さがよく伝わってくる。

 同じ恋人同士のシーンでも、「みつるの子ども(♂)と、精神病を患ってしまった30歳の彼女」の話になると、割に力が抜けて純愛もののテレビドラマのような雰囲気の芝居になる。クライマックスのそれは少し間延びして感じられたが、野田秀樹よろしく大騒ぎするみつるの母達と好対照を成していて面白い。

 恋人を想ったり、親が子を思いやったり、喧嘩して仲直りしたり、あるいは、陰湿に旧式ロボットを虐めていた新型ロボットが、旧式ロボットの思い遣りを知ったり。赤面してしまうほど純粋な数々の愛情が話を支えている。ここまで書いてきて初めて思い至ったぐらい、どのエピソードもささやかに描かれていて切ない。

 1つ1つを強烈に感じることは無いけど、全てを失ったみつるの
 「また、ゼロになりました!」
 という台詞で観客が後味良く席を立てるのは、話の中に織り込まれたそうしたエピソードが、(結果的に無かったことになっているとしても)確かに一時そこに存在していたからである。

 観ても面白いし、1つ1つシーンを思い出していると意外な伏線に気づいたりして嬉しくなる。
 いつまでも楽しめる、上質な作品である。
(小畑明日香 2005.3.09)


[上演記録]
東京ネジ第2回公演「フロウフユウ」(公演の予告編=ビデオもありました!)

日時:2005年1月27日-30日

作 :佐々木なふみ
演出:佐々木香与子

出演:
 佐々木香与子
 佐々木富貴子
 佐々木なふみ
 龍田知美(以上、東京ネジ)
 平野圭(ONEOR8)
 明石修平(bird's-eye view)
 宇田川千珠子
 浦井大輔(コマツ企画)
 田保圭一
 サイトウミホ

場所:王子小劇場(王子小劇場賛助公演)

Posted by KITAJIMA takashi : March 10, 2005 03:07 PM | Trackback
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