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June 26, 2005

劇団くねくねし「おみそれテクニク大辞典 ろくろっ首ロードくねくね!」

 芝居が始まると下手のスクリーンに、キューピーが半ズボンを履いたような2頭身のキャラが現れ、例のごとくピョンピョン跳ね回るのですが、危ないと思ったら案の定、地面の裂け目に落下。と同時に、ドーンという音で半ズボン姿の少年が舞台に登場する…。
 下北沢駅前劇場で開かれた劇団くねくねし「おみそれテクニク大辞典 ろくろっ首ロードくねくね!」公演(6月16日-19日)は、映像と現実との巧みな接合、ゲームを芝居に仕立てたというか、おとぎ話をゲーム感覚で作り上げたような冒頭のシーンで、切れ味のよいポップな芝居を予感させました。それから2時間。期待通り奇想天外なアイデアが次々に繰り出されるステージがスピーディーに、しかも手抜きなく目の前に現れ、エーッ、そんなのアリか、と思っているウチに、あれよあれよという間にラストのハッピーエンドまで連れて行かれます。ホントに、おみそれしました。

 「おみそれテクニク」の習得を目指す主人公の少年が、そのノウハウを集めた「大辞典」全100巻の読破、習得を目指す旅、というのがストーリーの大きな流れです。敵を倒してポイントを稼ぐような仕掛ではなく、桃太郎のように家来を集めて幼なじみの女友達と結婚するのがゴールですから、幸せなおとぎ話と言っていいかもしれません。

 ただ、登場人物はほとんどゲーム世界の住人そのまんまです。野球帽の下にお皿を隠した河童のクォー、巨大な野菜を売り歩く喜瓜風太朗、主人公と同じようにテクニックを学ぶおみそれケンジロウは「若」と呼ばれ、3人の部下もそれなりに技を身に着けている-。ゲームというかマンガの中にいるような登場人物が動き回る世界を、全力を傾けて作り上げます。おみそれテクニクの修行物語に加え、姉のなりすまし、父の母捜し、芸比べに負けてころりと相手方に寝返る部下の離反、終着駅まで行くのに20年もかかる地中列車など、副筋を絡ませる作劇上のテクニックもてんこ盛りです。
 「おみそれテクニク」も具体的に言われてみれば、「醤油の染みはゴシゴシこするな、根気よく叩け!」とか「円周率はπに置き換えて計算」とかいう類の「常識」レベル。そのおばかさ加減が笑いを呼ぶほどです。オゲイジュツの臭みはこれっぽっちもありません。
 しかし劇中に使われる映像はクオリティーが高く、お化け屋敷に入る前後でカップルの親密度が違ってくるイラストも秀逸。舞台美術も物語世界にぴったりだし、特にオリジナル楽曲を使った音楽は知らないうちにぼくらをドライブしてくれました。
 荒唐無稽や無邪気な要素が散りばめられたストーリーを、それぞれの分野の才能が寄ってたかって、しかもおもしろがって実現しようとする姿勢に、むしろけなげな潔さがうかがえるような気がします。

 月並みな言い方を借りると、この芝居は大人も子供も楽しめますが、それでも観客を選ぶのではないでしょうか。芝居を見て、なにかをつかみ取ろうとする「飢えた人たち」には場違いな気がします。レストランのメーンディッシュではないのです。夜店でにぎわうお祭りの空間で、裸電球に照らされた綿菓子を思い浮かべればいいのではないでしょうか。デザートの甘い香りと舌触りに似ているかもしれません。必要なのは、ほんのちょっぴりでいい、夢みる力と遊び心なのです。

 それにしても、主役の少年を演じた小田井孝夫はカッコよかった。初々しいというか、好奇心に満ちた百武マナブのキャラクターを、とてもすがすがしく演じていました。謎の列車の案内役だった新倉壮一郎は8頭身。立ち姿というより、長い手足がすてきに目立ちます。羽鳥ユリコは謎のキャラクター。あの頭に乗せた風車は何なんだ、どういう役回りなのか分かりにくいのですが、若い時代を演じた吉川かおりさんはとても印象に残ります。ひそかにファンに…。

くねくねし「おみそれテクニク大辞典」公演チラシ 才能が集まっていると言えば、文庫本のカバーに見立てたチラシも楽しめます。アイデアもいいし、出来栄えも図抜けていて、本物がみすぼらしく見えるほどでした。目立ちますよね。
 もう一つ、劇団のWebサイトも作りはプロはだし。スタッフの力をこれほど集められるのも、くねくねしの魅力だと思います。
(北嶋孝@ノースアイランド舎 6.28補筆)

【参考】
杉林充章(脚本)インタビュー「ウソとホントの境界線を渡る 固有名詞が出ない芝居づくり」(2004年10月3日)


[上演記録]
劇団くねくねし第4回公演「おみそれテクニク大辞典ろくろっ首ロードくねくね!」
 下北沢駅前劇場(6月16日-19日)

作 :杉林充章
演出:小田井孝夫
出演:
小田井孝夫/三土幸敏/新倉壮一郎/真下かおる/斎藤祐介/塩田泰典/吉川かおり/奥村香里/藤本征史郎/やまざきゲジゲジ/持永雄恵
役者松尾マリヲ(ロリータ男爵)/猿飛佐助(ベターポーヅ)/財団法人ノリオChan(エッヘ)

Posted by KITAJIMA takashi : June 26, 2005 07:43 PM | Trackback
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