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August 15, 2005

和栗由紀夫+上杉貢代「神経の秤」

 和栗由紀夫+上杉貢代「神経の秤」公演が8月4日-5日の2日間、東京・麻布die pratze で開かれました。舞踏の世界で、土方巽の弟子(和栗)と大野一雄の弟子(上杉)が共演するのはきわめて珍しいそうですが、その世界に疎いのでともかく舞台に目を注ぐことにします。
 最初は和栗のソロ約20分。次が上杉のソロ約20分。最後が2人で共演というか、「歩み寄る」という象徴的なシーンを作ります。

 和栗のソロは、場所的移動を極端に押さえたパフォーマンス。中央に立つ、というか佇むというか、やや腰を落としたまま、頭、目、眉、鼻、頬、額から始まり、首、肩、腕、手首、手のひら、5×2の計10本の指それぞれが反ったり撓んだり歪んだりきしんだり、お腹も背中も足脚以下も同様に微細な動きが次から次へと伝播するように、目に見えるほど筋肉の緊張が伝わっていきます。目の玉も大きく見開かれたりあらぬ方向を向いたり、それぞれの器官が左右違った動きを見せたり。ほとんど動かない身体は、みる側を息苦しくさせるほど。白塗りと言うか、土色の肌に筋肉の張りつめた形が現れるのを固唾をのんでみていました。

 舞台の後ろは白い幕を左右でからげ、出入りできるようになっています。和栗のソロが終わるころ、右手の幕から上杉がうつぶせになるぐらい身体を這わせて待機、和栗の退場とともにククククッとステージ中央に登場します。黒紫のドレス姿で円を描くように走り回ったり、暗転で大ぶりの着物姿に早変わりしたり、キツネ(犬?)面を被って踊り、面だけ客席に向けて後ろ姿のままのパフォーマンスを見せたり、豊かな表情とステージをいっぱいに使った動きが対照的でした。

 最後のステージは30分あまり続いたでしょうか。「白鳥のめがね」サイトのyanoz さんは次のように述べています。

この公演は、ラストーシーン、上杉と和栗の二人がステージの両端からゆっくりと歩み寄っていく場面が全てだった。
すくなくとも私にとっては、上杉の、まったき感受的な場となったかのごときまなざしを差し向けながらの、一歩一歩がふるえる息吹であるような歩みと、和栗の、眼を馬のようにして、硬く引き締まった筋肉をじりじりと駆動させていく歩みとが、互いの気配を緊迫させながら空間を占めてゆく、この音楽抜きのひとときに立ち会えただけで、十分だった。この時間だけを一時間たっぷり味わう事ができたらどれだけ素晴らしかった事だろう。

 2人の共演をプロデュースした舞踊評論家の志賀信夫さん(デュカスの日記舞台批評)によると、次のような経緯があったそうです。

企画は元々、和栗由紀夫さんと上杉貢代さんの舞踏、特にソロ部分がとても好きだったので、一度一緒に踊ってもらいたい、ということがきっかけでした。
 お話をもちかけても、最初はなかなかウンといって頂けず、一晩3人で飲んでようやくっていう帰り際、「やっぱりやめようか」ってなったり。
 でも実際に動き出してからは、結構スムーズに行かれたようで、最初上杉さんも15分くらい顔を出すだけ、というところから次第に積極的になられて、最終的にはコラボレーションといえるにふさわしい舞台になったと思います。4回のリハーサルであそこまで舞台が作れるのは、やはりプロです。特に後半の2人が絡む場面は、美しく感動的でさえありました。

 志賀さんが司会を務めたポストパフォーマンストークで、この公演の枠組みは和栗提案に沿っていたことが分かりました。「土方舞踏は空間とフォルムの型はあるけれど、時間は踊り手に任されている。この機会に土方舞踏を丁寧に踊ってみたかった」という和栗さんに対し、上杉さんは最初戸惑ったようです。「習っていたクラシックバレエは型そのもの。それが堅苦しくて、型のない大野一雄に引かれた。しかし今回は型のない不安はあったけれど、無防備でいこうと決めてから入り込めた」と話していました。2人の間柄について和栗さんは「わけ登るふもとの道は違えども、同じ高嶺の月を見るかな」という歌を何度か引用しながら、「同世代で話の合う”戦友”」と表現していたのが印象に残っています。

 蛇足を承知で付け加えますと、「神経の秤」はアントナン・アルトーの作品から取られています。「アルフレッド・ジャリ劇場を創設し、身体演劇である『残酷劇』を提唱。現代演劇に絶大な影響を与える」(『ウィキペディア(Wikipedia)』)と言われています。音楽は「バルトークやリストが好き」(和栗)「いつかワグナーの『トリスタンとイゾルデ』や『タンホイザー』で踊ってみたかった」(上杉)と話していました。

Posted by KITAJIMA takashi : August 15, 2005 11:59 PM
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