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April 26, 2005

劇団、本谷有希子「乱暴と待機」

 「劇団、本谷有希子」の第9回公演「乱暴と待機」が新宿シアターモリエールで開かれました(4月8日-17日)。自分の名前を劇団名にする1979年7月生まれの23歳。第7回公演の「石川県伍参市」が岸田國士戯曲賞の候補作になり、「ユリイカ」「新潮」などにエッセーや小説を執筆。この4月からニッポン放送「オールナイトニッポン」のパーソナリティーも務め、小説「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(04年12月「群像」掲載)が三島由紀夫賞の候補作になるなど、いま注目の作家です。ネット上に公演レビューも数多く掲載されています。

 劇団のWebサイトによると、あらすじというか、次のような設定で物語が進行するようです。

成功者だったはずの男は毎夜、女を観察するため屋根裏に潜む。 男の人生をうっかり滅茶苦茶にした女はそれを黙認し、美貌を隠し、憂さ晴らしに付き合ってやる。 二人の間にセックスはない。恨む側と恨まれる側という関係を崩してはならないからだ。 穴から部屋を覗きながら、男は今日もこの世で最も惨い復讐方法を考え続けている。 穴から視線を感じながら、女は今日もこの世で最も酷い罰が自分に下されるのを待ち続けている。 だが、いつまでたっても復讐が実行される気配はない。 事故のあった日から来週で12年目-男の30歳の誕生日だ。
 2人の関係は舞台でどう具体化されているのでしょうか。「Somethig So Right」サイトは次の個所をピックアップしています。
中学時代のイジメ体験から、他人の顔色を極端に気にするようになった女。男が復讐の方法を思いつくまで、男と同居してすでに六年。毎晩、寝る前に二人はこんな会話をする。  「おにいちゃん、明日は思いつきそう?」  「思いつくさ」  「そう、よかった」
 象徴的かもしれませんね。  実は、さらに続きがあるようです。「正しくも松枝日記」によると「そう、よかったね」と答えた後、「カレンダーに丸印をして/そして電気を消して寝る」のだそうです。だめ押しですね。

 「物語の前提やストーリーにはところどころ腑に落ちないことがあったし、ラストも私には特に響くものがあるわけではなかったのですが、さらりとしながら非常に狡猾でいやらしい精神的SMの世界に、どっぷりはまり込んでめちゃくちゃ楽しませていただきました。あの少し冷めた視線からのどん底のいやらしさは、女性ならではのものじゃないかなぁ。いや、本谷さんならでは、なのかもしれませんね」と言うのは、「しのぶの演劇レビュー」サイト。相変わらず精力的な舞台渉猟ですが、目の付け所がほかのレビューとは違って、かなり食い込んでいるように思います。

序盤の馬渕英里何さんの失禁シーンがめちゃくちゃ私好みでした。会話をさえぎってはいけない、話しかけられたら答えなきゃいけないと思うばかりに、おしゃべりの途中で「トイレに行ってきます」の一言が言えず、そのまま我慢の限界が来て、スウェット女は居間でおしっこをもらしてしまいます。・・・私には「萌えー!」ってヤツでしたよ、マジで!(告白ですね、コレ)。あと、同僚の彼女が高校時代のクラスメートだったことがわかり、彼女に嫌われたくない一心で、同僚に脅されながらセックスをする、しかも天井裏からお兄ちゃんがその情事を覗きやすい場所をわざと選ぶという状況もタマりません(笑)。

 なるほど、なるほど。失禁シーンを取り上げたのは、「しのぶ」さんだけではないでしょうか。

 全体のイメージはどうなのでしょうか。「無駄だらけの毎日。」サイトの「更紗」さんはこうまとめています。

人の心の闇、いや違うな。歪み、それも違う。なんと表現するのが適切なのだろう、汚さとでも言うのか。悪どいとかずる賢い汚さとかでもない、本当の汚さ。汚物に近い感じの。そういう汚さを描くのが本当に巧い(中略)。救いようのなさこそが救いのようで、それなのに観終わった後に「良かったなあ」となるそんな作品。

 「ヤサぐれ者の魔窟vs発掘亭日乗越」サイトの乗越たかおさんは「小劇場的という設定としてはある種オーソドックスともいえる造りなんだが、よくできていて、引き込まれる。『突き放した感』と『いきなり懐に刺し込む感』の緩急が絶妙。相当に削いでいっているのがわかる」と感心しています。


 役者の皆さんも魅力的だったようですが、特にスウェット姿の馬渕英里何さんは印象深かったようです。「主演の馬渕さんのスウェット+メガネ姿がエロ心をくすぐりました。作家は女性ですが、女性にもこういう心が分かるんですかねえ。。。不思議」(きくちブログ
「芝居に熱中すればするほど、観客は繰り返し馬渕英里何のジャージ姿を意識させられることになる」(a piece of cake !
「馬渕英里何さんの灰色スウェットの上下がめちゃくちゃいやらしいです。これをいやらしいと思ってしまっている時点で私の好み(嗜好)ってヘン?男性っぽいでしょうか?」(しのぶの演劇レビュー)
「このスウェット、妙に着古してあってぺらぺらで、スウェットのエロスというものを感じることが出来ます」(正しくも松枝日記

 スウェット姿は本谷有希子の狙いだったようです。馬渕英里何との対談(前半)で、「馬渕さんに出演してもらうって決まった時、まず「スエット!」って思ったのね。ホリプロから呼んどいてスエットしか着てない役っていうのも「いいよねー」と思ったし、他の人が当てないような役を当てようという狙いもあって。他では見れない馬渕さんをうちで見せようと思うから」と語っている。

 とまあ、だらだら書き綴ってきました。みていないと、あれもこれもと気が散りますね。このほか取り上げ損ねたレビューもいくつかあります。追記の形で取り上げます。しばらくのご猶予を。


 劇団サイトは、本谷本人の日記のほか、この公演に出演した役者座談会や、演出助手の女性による演出・制作エピソードが盛り込まれたりして、なかなか興味深い読み物になっていました。


[上演記録]
「劇団、本谷有希子」第9回公演「乱暴と待機
 新宿シアターモリエール(4月8日-17日)

□出演者
馬渕英里何
市川訓睦(拙者ムニエル)
多門 優(THE SHAMPOO HAT)
吉本菜穂子

□スタッフ
作・演出  … 本谷有希子
舞台監督 … 宇野圭一+至福団
舞台美術 … 中根聡子
照明    … 中山 仁(ライトスタッフ)
音響    … 秋山多恵子
演出助手 … 福本朝子
小道具 … 清水克晋(SEEMS)+山本愛
衣装    … 金子千尋
宣伝美術 … 風間のう
宣伝写真 … 引地信彦
WEB担当  … 関谷耕一
制作助手 … 嶋口春香
制作協力 … (有)ヴィレッヂ 
制作    … 寺本真美 中島光司

Posted by KITAJIMA takashi : 02:47 PM | Comments (0) | Trackback

April 25, 2005

劇団上田「上田展[Spring]」

 第18回パルテノン多摩小劇場フェスティバル2005が始まり、参加5劇団のトップを切って劇団上田「上田展[Spring]」公演が4月22日に開かれました。
 「デジログからあなろぐ」サイトの「吉俊」さんはまず、冒頭のシーンに引きつけられたようです。

椅子が7つ並んでいる・・・そこに、黒いタイツと白いワイシャツを着た男達(1人女性)が粛々と現れる。 皆、黒のサングラスを掛けている・・・椅子に座ってそれぞれ思い思いにくつろいでいるが、1人がおならをする。
最初は、おならするなよ~という反応を周りはしているのだが、いつしかそのおならが連続的に繰り返されるようになり、気が付くとそれは音楽になっている。
音楽の名前は忘れたが、有名な曲だ・・・それを各々がおならで表現していく、おならの音に合わせてお尻を上げたり体が飛んだりという典型的な「おなら動作」をする訳であるが、それが上手いこと演出されていて、見ていて心地よい。
馬鹿っぽい事なのだが、ちゃんと練習してリズムが狂わないようにするというのは簡単ではないだろう。

 アイデアは分かった。実際の芝居はどうだろうか-。興味は当然そうなりますね。

初めのパフォーマンスで完璧にお客さんの心を掴みまして、私もこれは期待できるなぁという印象を持ちました。 その後も、物語とは名ばかりにパフォーマンスというかコントというか、その境目をスタスタと7人で渡っていくお芝居。(中略)
正直に言って、一番最初に面白いものを見せすぎたような気がします。(中略)
個性豊かな演者が多くて、いままでに見たこと無い雰囲気・・・それとパワーに溢れていてよかったと思います。

 審査員を一般公募、ほぼ1年かけて東京近辺の劇団公演を見て回り、参加劇団を選ぶ方式をとっているという。そのせいか、選ばれるのは、おもしろいというか、笑える芝居が多くなりがちとの印象が強い。あと4劇団。今年はどうでしょうか。

 今回上演された「上田展」は「変態男爵 暗黒の脇毛編」。5月10日-11日に麻布die pratze で同「変態男爵 漆黒の乳毛編」公演が開かれる予定です。

Posted by KITAJIMA takashi : 11:42 PM | Comments (2) | Trackback

April 23, 2005

ポツドール「愛の渦」

 話題の「ポツドール」が新宿シアタートップスで、新作「愛の渦」を上演しています(4月20日-27日)。どんな物語かというと、「『心底スケベな男女数人が1室に集まって、朝まで好きなだけやる』という、羨ましい衝撃的なストーリー」(NO BUFFET,NO LIFE)「内容としては乱交パーティです。とは言えエロよりむしろ笑いの要素が相当の量」(キミテル日記)だそうです。

 前作「ANIMAL」はラジカセの音楽が大音量で流れ、せりふがほとんど聞き取れないまま終わったとの感想がありました。今回もせりふがあまり聞き取れない個所があったようです。
わぁ。(驚きに満ちた小さな悲鳴)」のqueequeg さんがこの点について、「『何言ってるか分からない』というのはつまり『何か言ってるのは分かる』わけで、つまりコミュニケーションの内容は伝わらなくてもコミュニケーションの形式は伝わる」「あと聞こえないとハビトゥスが前景化される、みたいなことをちょっと思った。というか聞こえない会話の内容を補うためにハビトゥスが動員されるってことだけど」という指摘はなかなか鋭いと思います。

 ぼくらの心的構成に直に変容を迫るのではなく、ぼくらが持ち合わせる心的機序のトリガーを引き、そこからさまざまな感情の渦を湧出させる方法論と言えるでしょうか。これはやり方が極端に違うように見えながら、平田オリザが繰り返し述べている演劇論や演出論、今年岸田國士戯曲賞を受賞したチェルフィッチュ岡田利規の手法にも通底します。

 取材やインタビューで、同調的な態度で相手の言い分を引き出すのか、挑発的な態度で隠された意図や感情を露出させるか、両極端のやり方があるのと似ているかもしれません(この二つだけに限りませんが)。「内部」を引き出したり露出させたりするやり方はさまざまだと思います。こういう手法に関して憶測はいくらでも可能ですが、ポツドールは未見なのでこの辺にとどめたいと思います。

【追記】(5.30)
 ポツドールの舞台はよく「リアル」と言われているようです。具体的にはどういうことか、「Somethig So Right」サイトの今井克佳さんは次のように述べています。

「時間をおってパーティーの様子が描かれていく。最初はどうにもぎこちなく、会話もなく、取りつく島もない居心地の悪さが続き、次第に会話が交わされていくのだが、実際、こういう場所であれば、まったくこうであろうと思われるような、会話の始まり方(なぜか最初は女同士で話し始め、そこに男が言葉をはさもうとして、別の女と会話が始まっていく、というような)の描写がリアルである。
 なぜか最初は女同士で話し始め、そこに男が言葉をはさもうとして、別の女と会話が始まっていく」という個所に、おもわず頬が緩みました。鋭い観察ですね。  また最後にも「リアル」が用意されているようです。
印象的だったのは、店員がカーテンをあけると、明け方の陽の光が部屋のなかに入って一気に入ってくるのだが、この光の表現はすばらしい。本当に一晩空けた、その夜の非日常の時間を終わらせ、日常の世界に戻す陽の光そのものだった。夢の終わり。セリフにもあったが、夜中は局部をあけっぴろげに見せていた女も、恥じらいながら服を着替えている。

 夜と昼。秘密の時間が日常世界に切り替わる瞬間を演出する力が存分に発揮されているように思われます。

 CLP(クリティック・ライン・プロジェクト)の皆川知子さんはこの舞台に関して次のように指摘します。

 性欲というテーマと、リアルな演技が、結びつけられた。その結果、舞台上で暴かれたのは、逆説的にも、私たちの実生活のなかで行われている演技、つまり現実のなかの嘘=フィクションだった。
 先の紹介でも触れましたが、ポツドール公演には、ぼくらを舞台に引きつけつつ、そのことがかえって僕らの内部を浮き立たせることになるという仕掛けが施されているのでしょうか。「欲望に対する演出家のシニカルな視線が、終始、舞台を貫いていた」という締めくくりが鋭く突き刺さってきます。


[上演記録]
ポツドールvol.13「愛の渦」
4月20日-27日、新宿THEATER/TOPS

脚本・演出 三浦大輔
出演 安藤玉恵 米村亮太朗 小林康浩 仁志園泰博 古澤裕介 鷲尾英彰 富田恭史(jorro) 青木宏幸 岩本えり 遠藤留奈 小倉ちひろ 佐山和泉

スタッフ
 照明 伊藤孝( ART CORE design) /音響 中村嘉宏(atSound)/舞台監督 矢島健
 舞台美術 田中敏恵/ 映像・宣伝美術 冨田中理(Selfimage Produkts)
 小道具 大橋路代/衣装 金子千尋/演出助手 富田恭史/ 写真撮影 曳野若菜
 ビデオ撮影 溝口真希子/制作 木下京子/制作補佐 井崎久美子/広報 石井裕太
 企画・製作 ポツドール

Posted by KITAJIMA takashi : 12:12 PM | Comments (0) | Trackback

April 22, 2005

メタリック農家「尼」

 メタリック農家「尼」公演が下北沢 OFF・OFFシアターで開かれました(4月8日-12日)。週末は劇場通いという「休むに似たり。」サイトの「かわひ_ 」さんは「メタリック農家の骨太で「堪える芝居」。物語多少ごちゃつきますが飽きずに見られる1h30」と述べています。

 「ハンサム部ブログ」サイトは「物語の本質的なところは良いと思うけれど、いざ戯曲の構成となってみると、ぶつぶつになってしまっているのがもったいない。対話のかみ合わせ、前半はあまり機能していない、後半は面白く観られる」と指摘。「タンツーblog!!」サイトは「夢と現実が入り混じる、狭い舞台をうまく使う ひっじょーによいお芝居」と大絶賛でした。

[上演記録]
メタリック農家「尼」公演
脚本・演出:葛木英
出演:
鞠子 酒井杏菜
寅吉 伊藤一将
聡史 竹井亮介(親族代表)
春実 葛木英
夏枝 古市海見子
鶯   宮本晶子 
慈胤 岩田裕耳
イル  中島徹
慈徳 大川祐佳里

Posted by KITAJIMA takashi : 10:42 PM | Comments (0) | Trackback
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