1ヵ月以上も前の公演を取り上げるのは気が引けるのですが、ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」を率いる井手茂太によるソロ公演「井手孤独【idesolo】」が世田谷のシアタートラムで行われました。しっかり書かれたレビューを複数、読むことができましたので、そのさわりを遅まきながら紹介したいと思います。
井手のソロ公演は久しぶりだったようです。「デュカスの日記」サイトの志賀信夫さんは、この辺りの事情を次のように記しています。
実際の舞台は「観客席の下半分を切って、平舞台の三方を取り巻くように座布団席と折りたたみ椅子による下の客席を作った。そこでは観客は靴を脱ぐ。舞台にはゴザに近いシートが敷かれ、そこに赤いシートで四角く花道のようなものが作ってある。舞台奥は通常のままで下手にピアノが一台」(「デュカスの日記」)という配置。「nemlog」サイトのkushanさんは「舞台は柔道場の緑の畳を地とし、試合場を示す赤い畳による正方形の枠線を大きく施す、というデザイン(畳はむろんイミテーション)」としています。
kushanさんは続けて、井手の踊りを次のように書いています。
志賀さんは導入シーンを微細に描写しています。
なるほど、なるほど。舞台の様子が目の前に浮かび上がり、手に取るように分かります。それら一連の動きの魅力を次のように伝えます。
前半、「俺」と書かれて垂れ幕が下がってくる場面があるようです。「ブロググビグビ」サイトの伊藤亜紗さんは「とちゅうでパッキーンと掛け軸が下り、「俺」の一文字。極太の墨で書かれた「俺」。独舞だとどんなテーマであれ、どうしてもダンサーの内側でおこってるできごと、自意識や、調子や、企てや、上昇、下降、といった微妙に変化しつづける空模様のようなものが舞台上にさらされているのを見る。だけどそれは繊細な「俺」の内面を見ているのではなく、「俺」をいかにけしかけて立たせるかという勝負のようなものを見ているのであって、畳に柔道場のような赤枠が引いてあるのも、そういうふうに見えた」と書き留めています。
ダンス批評で知られる「Sato Site on the Web Side」の kmr-satoさんもこの公演を取り上げています。「性的なアイデンティティ」にふれた個所はとても印象に残りました。
公演が終わった後、井手の演出ノートが配布され、そこに「いまの僕 鏡の中の僕 みられていない僕」と書かれていたようです。「演じ分けられた、三通りの「自分」ということらしい」と前置きして、「陸沈」サイトのtajatさんは次のように指摘しています。
ぼくが見た限り、それぞれの方々がソロ公演に引きつけられています。結語を抜き書きしてみます。
「全体的にバランスが良く、後半には破れもきちんとある秀作」(「nemlog」)
「ともかく、本気の一発を見せられたと思って感動しました」(Sato Site)
「シャイでありながら大胆、それが合わさった井手茂大を堪能した舞台だった」(「デュカスの日記」)
「あらゆる意味で一人舞台でしたが、ご本人が陶酔しているようなことは全くなく、計算しつくされた井出ワールドを満喫いたしました」(「しのぶの演劇レビュー」)
[上演記録]
井手孤独【idesolo】
世田谷・シアタートラム(5月26日-29日)
[参考]
・eplusの公演告知ページに、短いデモ映像が掲載されています。いつまでみられるかわかりませんが、なかなか得難い映像ではないでしょうか。
http://eee.eplus.co.jp/movie/0504/023/
・公演の写真はイデビアン・クルーのWebサイトに公開されています。
http://www.idevian.com/ja/idesolo.htm
「SOMA」という役者さんの独り芝居。7月5日のたった1日だけの公演「SOMA THE BEST SOMA ひとり芝居傑作選」 が東京・しもきた空間リバティで開かれました。「SOMAひとり芝居ホームページ」によると、SF新作「THE EDGE」の完全版(30分バージョン)「TOKYO LADIES」シリーズの新作小品、本間商事、下山リョウ、藤田亜季作の人気小作品など、こってりまるまる2時間、だったようです。
「おはしょり稽古」サイトのあめぇばさんがこの公演を取り上げ、「個人的な経歴などは殆ど存じ上げないのだが、凛として底無しに素直な人のように、何となく思える。芝居の技量もさることながら、そんなSOMAさん自身に知らず(知らず)皆惹かれていくのだろう。小劇場演劇に片足を突っ込んでから知ったかぶりしたくて色々な芝居を観てきたが、このSOMA組は唯一、本気でファンになった劇団」と傾倒しています。
「TOKYO LADIES XIII」は、こんなお話しだそうです。
演出は「早馬瑞陽」さん。SOMAさんご本人のようです。(上演記録を追記しました。2005.7.9)
[上演記録]
SOMA組「SOMA THE BEST SOMA ひとり芝居傑作選」
しもきた空間リバティ(2005.7.5.)
作:早馬瑞陽・下山 リョウ(Funny Sketch)・本間商事・後藤博之(アトリエフォレスト)・藤田明希
演出:早馬瑞陽
出演:SOMA
演出補:平野小僧
舞台監督:吉川悦子
照明:若林恒美
音響:宮崎裕之
デザイン:胡舟ヒフミ(オーバーワークス)
制作:宙丸千夏・玉水孝子・SOMA組
「おもしろいことなんでもやりたい集団」を自称するplay unit - fullfullの第11回公演「此処にいるはずのない私」が下北沢OFF・OFFシアターで開かれました(6月22日-26日)。
「休むに似たり。」サイトのかわひらさんによると、今回は「事件の中での人の気持ちの微かな動きを得意とするフルフルの新作。上京して数年、追いきれない夢を追い続ける女の所に転がり込む人々の話」だそうです。
劇団のWebサイトによると、あらすじは次の通りです。
「地味で陽気な何の変哲もないお話」を「デジログからあなろぐ」サイトの吉俊さんは「シチュエーションコメディーでも無ければ、人情ものという程の人間模様もない・・・日常に少し毛が生えたくらいの日常、ちょっとサスペンスな日常・・・背伸びした日常を背伸びしない人間が描き出していく」と述べています。そのあと具体的な指摘をいくつかしていますが、それは原サイトでご覧ください。
[上演記録]
play unit - fullfull第11回公演「此処にいるはずのない私」
下北沢OFF・OFFシアター(6月22日-26日)
作・演出 ヒロセエリ
出演 遠藤友美賀 広瀬喜実子 青山貞子 杉木隆幸
野呂彰夫 馬場恒行(KAKUTA) 清水徹也(クロム舎) 新井友香(劇団宝船)
名古屋を本拠とする劇団「あおきりみかん」の第13回公演「ホップ・ストップ・バスストップ」が名古屋で開かれました(愛知県立芸術劇場小ホール 6月9日-12日、G/Pit 6月25日-27日)。東京と名古屋を行ったり来たりしている「観劇インプレッション」サイトの#10さんはこの筋書きを「とある田舎のバス停で、一列にならんでバスを待つ人々。しかし定刻を過ぎてもまったくバスの来る気配がない。何が起きたのかといぶかしむ人々だったが、突然思いがけないハプニングが起こる…」と始めています。
舞台には大勢の役者が出ずっぱりのようです。「10人以上の役者がずっと舞台上にいるのは結構大変なことです。特に会話劇でこういう状況だとセリフのない役者が所在なげになってしまいがちなので、そこを上手にさばいて無駄なく見せていたのは見事でした」と演出を評価していました。
名古屋の舞台を丹念にみている「観劇の日々」サイトのしおこんぶさんは「バス停喜劇の決定版」として「お勧め度8(10段階)」だそうです。7月9日-10日は東京公演(新宿・シアター・モリエールが予定されています。