11月1日から新サイトに移行しました。URLは下記の通りです。リンクしている場合はURLを差し替えていただくようお願いいたします。

http://www.wonderlands.jp

July 11, 2005

井手茂太「井手孤独【idesolo】」

 1ヵ月以上も前の公演を取り上げるのは気が引けるのですが、ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」を率いる井手茂太によるソロ公演「井手孤独【idesolo】」が世田谷のシアタートラムで行われました。しっかり書かれたレビューを複数、読むことができましたので、そのさわりを遅まきながら紹介したいと思います。

 井手のソロ公演は久しぶりだったようです。「デュカスの日記」サイトの志賀信夫さんは、この辺りの事情を次のように記しています。

井手茂大はイデビアン・クルーを率いる振付家、ダンサーであり、近年「ダンダンブエノ」や松本修のカフカ、白井晃の『ルル』などの芝居でも振付を依頼され活躍している。井手は優れたダンサーなのだが、このところイデビアン・クルーでも踊っていない。数年前の『イケタライク』や林浩平の企画した武蔵大学の詩人とのコラボレーションなど、しっかり踊った姿は近年は数えるほどだった。それがシアタートラムの独舞シリーズという依頼でついに実現したことは、ダンスファンにとっては重要なことだった。

 実際の舞台は「観客席の下半分を切って、平舞台の三方を取り巻くように座布団席と折りたたみ椅子による下の客席を作った。そこでは観客は靴を脱ぐ。舞台にはゴザに近いシートが敷かれ、そこに赤いシートで四角く花道のようなものが作ってある。舞台奥は通常のままで下手にピアノが一台」(「デュカスの日記」)という配置。「nemlog」サイトのkushanさんは「舞台は柔道場の緑の畳を地とし、試合場を示す赤い畳による正方形の枠線を大きく施す、というデザイン(畳はむろんイミテーション)」としています。

 kushanさんは続けて、井手の踊りを次のように書いています。

井出は終始サラリーマン然としたスーツ姿で踊り、演じ、熱唱するのだが、公演の中盤には歌舞伎の女形のカツラを被ったり、ちょうどOLがプラダのバッグを携えるように炊飯器を片手にもち、ファンションモデルのように直線的な歩行を繰り返したりもする。そうすることにより、スーツにネクタイという現代社会版「紋付き袴」「ちょんまげ」のもつ可笑しさを巧く対象化してみせている。
 見る/見られるという視線の方向性と踊る‘自意識’との影響関係をどう捉え、‘身体’がのる振付へといかに還元させるのかという点が、この舞台では演出上の鍵となっていた。畳状の赤い枠線は、もっぱらこの関係性の在りかたがそこを境に変容するような分水嶺の役割を果たしており、突如介入してくる音楽やズレて差し込んでくるスポットライトがこの変化に明瞭な区切りを与えていた。

 志賀さんは導入シーンを微細に描写しています。

無音のなかでスーツ姿にイガグリ頭で裸足の井手が上手の袖からちょっと顔を覗かせる。そして少しずつ歩みそうになって、戻る動き、傾いたまま動きそうな姿勢など、緊張感のある非常にゆっくりした踊りを展開しだす。すると下手手前のスピーカーから割れるようなロックの音。それに吃驚して井手は元の袖に慌てて消える。また恐る恐る登場。またゆっくりとした踊りを繰り広げる。と音楽とともに下手観客席横に布団を持ったオバさんが登場して、布団を叩きながら、「ひっこせ、ひっこせ」と連呼。最近話題になった近隣嫌がらせで逮捕されたオバさんのパロディー。それに驚いて、井手はまた引っ込む。これが繰り返され、黒服の女性がオバさんを連れ去る。この踊りそうで踊らないような導入自体がいい踊り。照明が変わると、井手がスーツのまま頭に日本髪の鬘で目隠しをして、手に炊飯ジャーを持って登場し、足元を探りながら上手奥の赤いラインの角に向こう向きに立って、空手の動き。女性が登場して、井手をこちら向きにする。目隠しを外してジャーを持ったまま赤いラインの上を四角く歩く。そして踊りだす。

 なるほど、なるほど。舞台の様子が目の前に浮かび上がり、手に取るように分かります。それら一連の動きの魅力を次のように伝えます。

井手の動きは基本的に音楽に合わせて腰を動かし、両手を動かしというジャズダンスやディスコダンス的な要素がある。音楽もジャズやラテンムード音楽をよく使う。しかしジャズ、ディスコ、ラテンダンスとはまったく違う。体操選手のウォームアップのような動き、手を使ったギャグ的マイムから倒れ込み、床でごろごろ動く、突然立ちあがって、バレエの回転とジャンプ、また倒れてうごめき、起きて武道的動きやモデルウォーク、ストリップ的腰振りと股間突き出しなど、あらゆるものが混在一体となっている。それが実に自在に動き、かつぽっちゃりとしかし筋肉の詰まった体が行うため、コミカルみも見えながら、それが次第にかっこよく見えてくるから不思議だ。ともかく見ていて楽しいダンス。そしてどこか切ないような気持ちを、ちょっとだけ喚起するところが魅力的だ。

 前半、「俺」と書かれて垂れ幕が下がってくる場面があるようです。「ブロググビグビ」サイトの伊藤亜紗さんは「とちゅうでパッキーンと掛け軸が下り、「俺」の一文字。極太の墨で書かれた「俺」。独舞だとどんなテーマであれ、どうしてもダンサーの内側でおこってるできごと、自意識や、調子や、企てや、上昇、下降、といった微妙に変化しつづける空模様のようなものが舞台上にさらされているのを見る。だけどそれは繊細な「俺」の内面を見ているのではなく、「俺」をいかにけしかけて立たせるかという勝負のようなものを見ているのであって、畳に柔道場のような赤枠が引いてあるのも、そういうふうに見えた」と書き留めています。

 ダンス批評で知られる「Sato Site on the Web Side」の kmr-satoさんもこの公演を取り上げています。「性的なアイデンティティ」にふれた個所はとても印象に残りました。

「炊飯器」を手にあらわれ、踊り出す。これは間違いなく「おかま」だ。それは最後には、猛烈な蒸気を噴き出して舞台を真っ白にする。あと、最後の最後、ひととおり踊って歌った(?!)後、汗かく背中を剥き出しにしてしかし、おもてを見せずに佇んだあたりは、男性ダンサーがしばしばイージーに上半身裸になってしまうことへの静かな抵抗のようでもあり、また丸い背中のセクシーさを訴えるエロティックなシーンともとれた。

 公演が終わった後、井手の演出ノートが配布され、そこに「いまの僕 鏡の中の僕 みられていない僕」と書かれていたようです。「演じ分けられた、三通りの「自分」ということらしい」と前置きして、「陸沈」サイトのtajatさんは次のように指摘しています。

観客は気付かなかっただろうか。舞台上の井手はほとんど、スポットを浴びては居なかった。開演直後、彼は一番明るく照らされた柔道場の真ん中ではなく、奥の薄暗いステージでひたすら踊っていた。赤い正方形がくっきりと照らし出されたときも、井手はライトのもとに入ろうとはせず、その縁を足でなぞって歩くばかりだった。後ろ向きでステップの練習をする井手、椅子に座ってうなだれる井手、柔道着で汗を拭い、窓辺に向かって背伸びをする井手。そんな、ダンスの舞台からはひとつ外れた、“スポットを浴びていない”井手は、正に、「みられていない僕」の表象である。

 ぼくが見た限り、それぞれの方々がソロ公演に引きつけられています。結語を抜き書きしてみます。

「全体的にバランスが良く、後半には破れもきちんとある秀作」(「nemlog」)
「ともかく、本気の一発を見せられたと思って感動しました」(Sato Site)
「シャイでありながら大胆、それが合わさった井手茂大を堪能した舞台だった」(「デュカスの日記」)
「あらゆる意味で一人舞台でしたが、ご本人が陶酔しているようなことは全くなく、計算しつくされた井出ワールドを満喫いたしました」(「しのぶの演劇レビュー」)


[上演記録]
井手孤独【idesolo】
世田谷・シアタートラム(5月26日-29日)


[参考]
・eplusの公演告知ページに、短いデモ映像が掲載されています。いつまでみられるかわかりませんが、なかなか得難い映像ではないでしょうか。
 http://eee.eplus.co.jp/movie/0504/023/
・公演の写真はイデビアン・クルーのWebサイトに公開されています。
 http://www.idevian.com/ja/idesolo.htm

Posted by KITAJIMA takashi : 11:03 PM | Comments (3) | Trackback

July 07, 2005

SOMA組「SOMA THE BEST」

 「SOMA」という役者さんの独り芝居。7月5日のたった1日だけの公演「SOMA THE BEST SOMA ひとり芝居傑作選」 が東京・しもきた空間リバティで開かれました。「SOMAひとり芝居ホームページ」によると、SF新作「THE EDGE」の完全版(30分バージョン)「TOKYO LADIES」シリーズの新作小品、本間商事、下山リョウ、藤田亜季作の人気小作品など、こってりまるまる2時間、だったようです。

 「おはしょり稽古」サイトのあめぇばさんがこの公演を取り上げ、「個人的な経歴などは殆ど存じ上げないのだが、凛として底無しに素直な人のように、何となく思える。芝居の技量もさることながら、そんなSOMAさん自身に知らず(知らず)皆惹かれていくのだろう。小劇場演劇に片足を突っ込んでから知ったかぶりしたくて色々な芝居を観てきたが、このSOMA組は唯一、本気でファンになった劇団」と傾倒しています。
 「TOKYO LADIES XIII」は、こんなお話しだそうです。

五人の女性が登場する。引きこもりの一人息子を持つ母親、営業マンのOL、志敗れて不登校になってしまった高校教師、出会い系に登録している女子高生、そして四人が居合わせたハーブティーの美味しい喫茶店に勤める、ウェイトレス。(略)些細なきっかけで話すことになった四人は、やがてお互いの状況を打ち明けるようになる。たまに照明が変わって一人が客席に向かって語ったりして、間延びしないような造りに仕上がっている。
軽妙で、殆ど笑いっぱなしに笑える。なのに文章にしようとして舞台を思い出すと、優しい雰囲気に今更のように気づいて涙が出てきそうだ。

 演出は「早馬瑞陽」さん。SOMAさんご本人のようです。(上演記録を追記しました。2005.7.9)

 [上演記録]
SOMA組「SOMA THE BEST SOMA ひとり芝居傑作選」
しもきた空間リバティ(2005.7.5.)

作:早馬瑞陽・下山 リョウ(Funny Sketch)・本間商事・後藤博之(アトリエフォレスト)・藤田明希
演出:早馬瑞陽
出演:SOMA
演出補:平野小僧
舞台監督:吉川悦子
照明:若林恒美
音響:宮崎裕之
デザイン:胡舟ヒフミ(オーバーワークス)
制作:宙丸千夏・玉水孝子・SOMA組

Posted by KITAJIMA takashi : 02:28 PM | Comments (0) | Trackback

July 05, 2005

play unit-fullfull「此処にいるはずのない私」

 「おもしろいことなんでもやりたい集団」を自称するplay unit - fullfullの第11回公演「此処にいるはずのない私」が下北沢OFF・OFFシアターで開かれました(6月22日-26日)。
 「休むに似たり。」サイトのかわひらさんによると、今回は「事件の中での人の気持ちの微かな動きを得意とするフルフルの新作。上京して数年、追いきれない夢を追い続ける女の所に転がり込む人々の話」だそうです。

 劇団のWebサイトによると、あらすじは次の通りです。

上京したての頃、女には夢があった。夢を叶える為、 春のわくわく感と共に新しい生活をスタートさせた。 全てか楽しく希望に満ちた日々だった。 夢に向かった生活は好調な切り出しだ。 だが希望に満ちた日々は、慣れと現実の生活に揉まれて曖昧になってしまった。 気付けば30才、夢も希望もない、ふつうの生活。 『あ、っれ~?こんなだったけ?』 女にイライラと焦りが募る。そんな自分の現状に戸惑い出した頃、田舎の家族が夜逃げして来た。 彼らをかくまい、生活をみる羽目になる。 神経をきりきり心配する女を他所目に、明るく陽気な家族たち。 とてもじゃないけど、借金苦で夜逃げして来た人達には見えない。 家族の呑気さに、女のイライラはピークに達して・・・。 フルフルの、地味で陽気な何の変哲もないお話です。

 「地味で陽気な何の変哲もないお話」を「デジログからあなろぐ」サイトの吉俊さんは「シチュエーションコメディーでも無ければ、人情ものという程の人間模様もない・・・日常に少し毛が生えたくらいの日常、ちょっとサスペンスな日常・・・背伸びした日常を背伸びしない人間が描き出していく」と述べています。そのあと具体的な指摘をいくつかしていますが、それは原サイトでご覧ください。


[上演記録]
play unit - fullfull第11回公演「此処にいるはずのない私」
下北沢OFF・OFFシアター(6月22日-26日)

作・演出 ヒロセエリ
出演 遠藤友美賀 広瀬喜実子 青山貞子 杉木隆幸
野呂彰夫 馬場恒行(KAKUTA) 清水徹也(クロム舎) 新井友香(劇団宝船)

Posted by KITAJIMA takashi : 08:43 PM | Comments (0) | Trackback

July 03, 2005

あおきりみかん「ホップ・ストップ・バスストップ」

 名古屋を本拠とする劇団「あおきりみかん」の第13回公演「ホップ・ストップ・バスストップ」が名古屋で開かれました(愛知県立芸術劇場小ホール 6月9日-12日、G/Pit 6月25日-27日)。東京と名古屋を行ったり来たりしている「観劇インプレッション」サイトの#10さんはこの筋書きを「とある田舎のバス停で、一列にならんでバスを待つ人々。しかし定刻を過ぎてもまったくバスの来る気配がない。何が起きたのかといぶかしむ人々だったが、突然思いがけないハプニングが起こる…」と始めています。
 舞台には大勢の役者が出ずっぱりのようです。「10人以上の役者がずっと舞台上にいるのは結構大変なことです。特に会話劇でこういう状況だとセリフのない役者が所在なげになってしまいがちなので、そこを上手にさばいて無駄なく見せていたのは見事でした」と演出を評価していました。

 名古屋の舞台を丹念にみている「観劇の日々」サイトのしおこんぶさんは「バス停喜劇の決定版」として「お勧め度8(10段階)」だそうです。7月9日-10日は東京公演(新宿・シアター・モリエールが予定されています。

Posted by KITAJIMA takashi : 10:45 PM | Comments (0) | Trackback
 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  | 8 |  9  |  10  |  11  |  12  |  13  |  14  |  15  |  16  |  17  |  18  |  19  |  20  |  21  |  22  |  23  |  24  |  25  |  26  |  27  |  28  |  29  |  30  |  31  |  32  |  33  |  34  |  35  |  36  |  37  |  38  |  39  |  40  |  41  |  42  |  43  |  44  |  45  |  46  |  47  |  48  |  49  |  50  |  51  |  52  |  53  |  54  | all pages