11月1日から新サイトに移行しました。URLは下記の通りです。リンクしている場合はURLを差し替えていただくようお願いいたします。

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July 14, 2005

劇団桃唄309「ブラジャー」

 劇団桃唄309「ブラジャー」公演が、オープンしたばかりの東京・吉祥寺シアターで開かれました(7月7日-11日)。桃唄はこのところ「多数のシーンを暗転などを全く用いずに間断なくつなげることで、人物像や人間関係、社会状況や歴史的背景などを俯瞰してみせる手法が中心」(劇団Webサイト)の舞台を提供してきたようです。この手法は今回も踏襲され、取り上げた題材はタイトル通り「ブラジャー」です。

 舞台上にセットらしきものはほぼ皆無。正面奥に、役者を乗せて移動する2メータ四方のキャスターがあるだけです。ステージは照明で正方形に縁取りされ、内側で役者が演じ、薄暗い外側は衣装や小道具の準備をしたり座って待機したりというオフ空間として処理されます。「デジログからあなろぐ」サイトの吉俊さんはこの辺りを「舞台というリングに出たり入ったり・・・表現空間へと入り込むその瞬間の役者の変貌が面白かったりします。なんか・・・芝居というよりは、祭事のように見えなくも無い」と書き留めています。ブラジャーの歴史をさまざまなエピソードを交え、登場人物がさまざまに出入りする群像(+ミシン)劇として構成します。終演後には「祭事」ということばが不思議に記憶に残ります。

 作・演出の長谷基弘さんによると、ブラジャーは近代ヨーロッパで「再発明」され、身体を締め付けるコルセットを瞬く間に駆逐。この芝居は当時誕生した中産階級、女性労働、そしてミシンや化学繊維、ファッション意識の転換など社会の変遷をからめ、そいうブラジャー史をエンターテイメントとして描こうとしているそうです。
 スッピンのステージで、ミシンとボビン(糸巻き)の誕生、活躍から、やがて廃用品として忘れられ、その後手作りブラジャー製作用にさび付いた個所を整備し直して再登場。最後に寿命が尽きてこと切れるまでが狂言回しというより、物語の縦糸として織り込まれています。ですから、ミシンとボビンの幸せな(としか言いようのない)一生を葬送=言祝ぐ時間と空間とみなせばなるほど、「祭事」にふさわしい舞台なのかもしれません。

 冒頭、舞台上手奥から、ブラジャーの幟を立てた一行十数人がマント姿でトランクなどを携え、一列になって登場します。アンゲロプロス監督の映画「旅芸人の記録」の冒頭シーンかと一瞬戸惑いましたが、映画のような現代史の濃い影が差しているようにはみえません。一行はぐるりとステージを回り、やがてばらけて、照明外のオフ空間に散らばります。
 そこから1時間40分余り、ミシンの豆知識から大勢の人物の出し入れ、開発、製造、販売のエピソードや過去と現在の組み合わせなど、めまぐるしいほど場面は切り替わります。しかし混乱することはなく、むしろ整然といっていいほど鮮やかで確かな手並み。歌も交えて「ブラジャー史をエンターテイメントとして描こう」という熟達した技を見せてもらった気分です。

 劇団Webサイトには書き込み可能な 「ブラジャー」専用サイト [BraWiki] を開設。公演ページで大人も子供の楽しめる芝居だと告知しています。

お子様とご一緒にどうぞ!
この劇には過度の暴力表現や猥褻表現はありません。お子様連れのお客様も安心してご覧頂けます。

 今回の舞台作りに携わった劇団関係者の考えがストレートに表現されているような気がします。「新鮮で、豊かで、後で思い返すことで何度でも楽しめる体験」を観客に味わってもらおうという劇団の姿勢の表れなのでしょう。終演後の「バックステージ・ツァー」も大変ありがたい企画でした。


[上演記録]
劇団桃唄309ブラジャー
2005年7月7日(木)~11日(月)
吉祥寺シアター

戯曲・演出:長谷基弘
出演:
楠木朝子
森宮なつめ
山口柚香
藤本昌子
橋本健
吉原清司
バビィ
吉田晩秋
佐藤達
貝塚建
ほりすみこ (Website)
生井歩 (劇団レトロノート)
鈴木ゆきを
坂本和彦
北村耕治

スタッフ:
演出助手/小林佐千絵 (劇団レトロノート)
舞台監督/井上義幸(F.F企画)
照明/伊藤馨
照明協力/有限会社アイズ
音響/萩田勝巳
宣伝美術/岡崎伊都子
制作/ウィンドミルオフィス SUI
協力/株式会社ワコール にしすがも創造舎

Posted by KITAJIMA takashi : 02:43 PM | Comments (0) | Trackback

June 27, 2005

劇団鹿殺し「百千万」

 劇団鹿殺し第12回公演「百千万(モモチマ)」(6月23日-28日)を王子小劇場でみました。入り口で眉をそり上げ、アイシャドウを塗ったお兄ちゃんが幟を抱えて客入れしています。いささか気持ちの悪いチラシの絵柄と同じ雰囲気。結局、舞台も似たような印象に終始しました。ゴキブリコンビナートと大人計画を足して2で割って、結果をすこし薄めたような感じのステージです。

 福井県の美浜原発3号機で爆発事故が起き、巨大な頭部を持つ子供「エンゲキ」が生まれます。父が欲しがった越前ガニや行方知れずの母を求めて、彼女が美浜町を目指すロードムービー、ある種の成長物語=ビルドゥングス・ロマンのような展開でした。
 ほぼ時系列順に6話構成。カニ売りとの出会い、父が属したことのある大学の原子力研究所の内幕、核爆発事故の真相などがチープなセット上で進行します。筋はあってなきがごとし、というより最後まで太線で引いてしまったので、かえってウソっぽく感じられてしまいます。

 役者はだれもが薄汚れて見え、粗野な男っぽい雰囲気。男の体臭というか、精液まみれの空気を漂わせています。エイズで亡くなったクイーンのボーカル、フレディー・マーキュリーのビデオ映像を流しながら、マイクを男性器に見立てて振り回すコピー・パフォーマンスは十八番(おはこ)のようでした。振りも堂に入って、さすがにビシッと決まっていたのが、そんなイメージをかき立てました。

 後半は局部を辛うじて隠した男性陣が、ほぼ全裸で踊ったり体をぶつけ合ったりの見せ場が出てきます。そこで宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をとことんコケにしたシーンは特筆モノでした。乙女チックな幻想に泥を浴びせるのですから、宮沢ファンにとっては憤激モノかもしれませんが、ぼくは文句なく笑えました。どこかで被いが外れるのではないかという一部観客の期待は満たされなかったようです。少なくともぼくが見た23日は、微妙なはみ出し!だけでした。

 原発反対のプラカードが出てきたりそれらしいせりふが散りばめられています。初期の大人計画にもそんなシーンがあったと記憶しますが、しかし本筋というより、ストーリー展開の上で織り込まれた背景のひとつに過ぎないような気がします。

 公演がひとまず終了したら、役者たち自身が両袖で「アンコール」「アンコール」と叫び出します。苦笑気味の客席がぱらぱら拍手すると、おそろいの黒いTバック姿で役者たちが登場し、路上ライブで鍛えたと思われるおそろいのダンスシーンを見せていました。劇団のWebサイトによると、セルフアンコールだそうです。男の肌のすべすべやムキムキ、それにモッコリ好きのファンにはたまらないおまけだったのではないでしょうか。

 劇団サイトに、昨年11月の大阪公演アンケートがいくつか掲載されています。
 「あたたかい劇でした」「初めて旅に出たくなりました」「やりたい放題、汗だくでやっている姿にしびれました」「楽しかったです。なんか元気でました」「カッコいいよ!粋だよ!キタねー、変態が!最高だよ!」…。
 筆跡がどれも似たり寄ったりに見えたのがご愛嬌ですが、ファンの関心のありようとともに、こういうアンケートを掲載した劇団の心情が吐露されているとみたほうがいいのかもしれません。(北嶋孝@ノースアイランド舎、6月29日、7月1日補筆)

[上演記録]
劇団鹿殺し第12回公演「百千万」(モモチマ)
東京・王子小劇場(6月23日-28日)

作 :丸尾丸一郎
演出:髭の子チョビン

出演:髭の子チョビン、丸尾丸一郎、山本聡治、JIRO..J.WOLF、渡辺プレラ、オレノグラフィティ、中村達也
サポート:リアルマッスル泉
歌手:青山和弘

スタッフ:
舞台監督 吉田慎一
舞台美術 津郷峰雪
照明デザイン 戒田竜治(満月動物園)
照明操作 海老澤美幸
音響協力 (有)T&Crew
衣装 赤穂美咲
コスチューム製作 坂下智宏
映像 三木康平・高堂勝
写真 溝添真紀
フライヤーデザイン&WEBデザイン 李
製作助手 山田裕美、内藤玲奈、束野奈央、李

企画製作 オフィス鹿


Posted by KITAJIMA takashi : 10:44 PM | Comments (4) | Trackback

June 26, 2005

劇団くねくねし「おみそれテクニク大辞典 ろくろっ首ロードくねくね!」

 芝居が始まると下手のスクリーンに、キューピーが半ズボンを履いたような2頭身のキャラが現れ、例のごとくピョンピョン跳ね回るのですが、危ないと思ったら案の定、地面の裂け目に落下。と同時に、ドーンという音で半ズボン姿の少年が舞台に登場する…。
 下北沢駅前劇場で開かれた劇団くねくねし「おみそれテクニク大辞典 ろくろっ首ロードくねくね!」公演(6月16日-19日)は、映像と現実との巧みな接合、ゲームを芝居に仕立てたというか、おとぎ話をゲーム感覚で作り上げたような冒頭のシーンで、切れ味のよいポップな芝居を予感させました。それから2時間。期待通り奇想天外なアイデアが次々に繰り出されるステージがスピーディーに、しかも手抜きなく目の前に現れ、エーッ、そんなのアリか、と思っているウチに、あれよあれよという間にラストのハッピーエンドまで連れて行かれます。ホントに、おみそれしました。

 「おみそれテクニク」の習得を目指す主人公の少年が、そのノウハウを集めた「大辞典」全100巻の読破、習得を目指す旅、というのがストーリーの大きな流れです。敵を倒してポイントを稼ぐような仕掛ではなく、桃太郎のように家来を集めて幼なじみの女友達と結婚するのがゴールですから、幸せなおとぎ話と言っていいかもしれません。

 ただ、登場人物はほとんどゲーム世界の住人そのまんまです。野球帽の下にお皿を隠した河童のクォー、巨大な野菜を売り歩く喜瓜風太朗、主人公と同じようにテクニックを学ぶおみそれケンジロウは「若」と呼ばれ、3人の部下もそれなりに技を身に着けている-。ゲームというかマンガの中にいるような登場人物が動き回る世界を、全力を傾けて作り上げます。おみそれテクニクの修行物語に加え、姉のなりすまし、父の母捜し、芸比べに負けてころりと相手方に寝返る部下の離反、終着駅まで行くのに20年もかかる地中列車など、副筋を絡ませる作劇上のテクニックもてんこ盛りです。
 「おみそれテクニク」も具体的に言われてみれば、「醤油の染みはゴシゴシこするな、根気よく叩け!」とか「円周率はπに置き換えて計算」とかいう類の「常識」レベル。そのおばかさ加減が笑いを呼ぶほどです。オゲイジュツの臭みはこれっぽっちもありません。
 しかし劇中に使われる映像はクオリティーが高く、お化け屋敷に入る前後でカップルの親密度が違ってくるイラストも秀逸。舞台美術も物語世界にぴったりだし、特にオリジナル楽曲を使った音楽は知らないうちにぼくらをドライブしてくれました。
 荒唐無稽や無邪気な要素が散りばめられたストーリーを、それぞれの分野の才能が寄ってたかって、しかもおもしろがって実現しようとする姿勢に、むしろけなげな潔さがうかがえるような気がします。

 月並みな言い方を借りると、この芝居は大人も子供も楽しめますが、それでも観客を選ぶのではないでしょうか。芝居を見て、なにかをつかみ取ろうとする「飢えた人たち」には場違いな気がします。レストランのメーンディッシュではないのです。夜店でにぎわうお祭りの空間で、裸電球に照らされた綿菓子を思い浮かべればいいのではないでしょうか。デザートの甘い香りと舌触りに似ているかもしれません。必要なのは、ほんのちょっぴりでいい、夢みる力と遊び心なのです。

 それにしても、主役の少年を演じた小田井孝夫はカッコよかった。初々しいというか、好奇心に満ちた百武マナブのキャラクターを、とてもすがすがしく演じていました。謎の列車の案内役だった新倉壮一郎は8頭身。立ち姿というより、長い手足がすてきに目立ちます。羽鳥ユリコは謎のキャラクター。あの頭に乗せた風車は何なんだ、どういう役回りなのか分かりにくいのですが、若い時代を演じた吉川かおりさんはとても印象に残ります。ひそかにファンに…。

くねくねし「おみそれテクニク大辞典」公演チラシ 才能が集まっていると言えば、文庫本のカバーに見立てたチラシも楽しめます。アイデアもいいし、出来栄えも図抜けていて、本物がみすぼらしく見えるほどでした。目立ちますよね。
 もう一つ、劇団のWebサイトも作りはプロはだし。スタッフの力をこれほど集められるのも、くねくねしの魅力だと思います。
(北嶋孝@ノースアイランド舎 6.28補筆)

【参考】
杉林充章(脚本)インタビュー「ウソとホントの境界線を渡る 固有名詞が出ない芝居づくり」(2004年10月3日)


[上演記録]
劇団くねくねし第4回公演「おみそれテクニク大辞典ろくろっ首ロードくねくね!」
 下北沢駅前劇場(6月16日-19日)

作 :杉林充章
演出:小田井孝夫
出演:
小田井孝夫/三土幸敏/新倉壮一郎/真下かおる/斎藤祐介/塩田泰典/吉川かおり/奥村香里/藤本征史郎/やまざきゲジゲジ/持永雄恵
役者松尾マリヲ(ロリータ男爵)/猿飛佐助(ベターポーヅ)/財団法人ノリオChan(エッヘ)

Posted by KITAJIMA takashi : 07:43 PM | Comments (0) | Trackback

June 21, 2005

とくお組「マンション男爵」

 慶応義塾演劇研究会出身の「とくお組」第4回公演「マンション男爵」が東京・渋谷の LE DECOで開かれました(6月15日-19日)。昨年のガーディアンガーデン演劇フェスティバルでは残念ながら出場枠から外れましたが、多くの審査員が実力を認める存在でした(「公開審査」参照)。ぼくも予選審査会場にいて、彼らのパフォーマンスに感心した記憶があります。
 明治通りに面したビルの5階。マンションの一室らしいフロアーが会場です。時間ぎりぎりに入場したら、すでに大きなテーブルを囲んで「男爵」たちが席に着いています。すぐにメンバー同士が口論したりして内輪もめの様子でした。

 一段落したところで、片想いに悩む若い男が、会場入り口から入ってきます。恋の成就のために、男爵たちがそれぞれの特技を生かして悩みの原因を特定し、さまざまな手段を駆使して解決策を授けていきます。コンピュータを使って分析するアナリスト(クロコダイル男爵)、恋の相手に他人の名を騙って電話するネゴシエーター(スネーク男爵)、ダンディー気取りで説教を繰り返し、挙げ句の果てに豹柄の服装を強要するホスト(タイガー男爵)、そしてトイレットペーパーで恋の行方をみせようとする占い師(ポテト男爵)はストーリーの節々でボケ役を演じてみせる…。エピソードの割り振りやストーリーの起伏作りなど腕は確かです。

 会場の使い方が変わっていました。テーブルと同じフロアーの3面に客席がセットされ、正面にはスクリーンが張られています。怪しげなデータ解析はここに大写しされるわけです。扉を開けてベランダでケイタイを傍受しようとすると、会場には街の騒音が飛び込んできてなんとなくリアルな感じがします。大詰め近く、恋敵を妨害しつつ、女の子の行動を見張る場面を「おはしょり稽古」サイトのあめぇばさんは「場所いじり」として次のように書いています。

 出演する役者を決めてから台本を書くことを「あて書き」と言うけど、今回のとくお組の公演は劇場版「あて書き」かもしれない。観客と同じドアから相談者は入り、クロコダイル男爵はベランダに通じる扉から外に出て、パソコンで相手の女の子の居場所を特定する。
「いました!」
「どこだ!」
「向かいのスターバックスコーヒーです!」
 この辺のやり取りは学園モノの学生劇団のノリだ。「マンション男爵」のすごい所はこの場所いじりを徹底させて、最後は実際に役者を(道路向かい側にある)スタバまで往復させてしまったところだ。(といっても真意は観客には分からないのだが)

 相談者を助けるつもりでアルバイト先の店長に電話したポテト男爵が、ささいなことでキレて店長と怒鳴り合いを演じたり、ケータイ傍受用のアンテナが鉄製のフライパンだったり、まことしやかな口舌と裏腹に、実際は恋の行方をあらぬ方向にそらす場面作りは会場の笑いを呼んでいました。この辺の呼吸は、好みの人にはこたえられないでしょう。よくできたシチュエーションコメディーと言っていいのではないでしょうか。ポテト男爵を演じた役者の個性が笑いに拍車をかけていました。

 今回の公演はおもしろかったのですが、フォーマルウエアに身を固め、舶来の「男爵」を演じる姿は、やはりどこか窮屈な印象を免れません。昨年のガーディアンガーデン演劇フェスティバルでみせたコント・パフォーマンスは軽快でしゃれていて、みていて気持ちが伸びやかになりました。しゃれたコントを連発して見せた舞台とガチガチに筋書きを固めた舞台と、劇団の才能の幅を見せてもらいましたが、これからどちらの流れに乗っていくのでしょうか。
(北嶋孝@ノースアイランド舎)

[上演記録]
とくお組 第四回公演『マンション男爵』
渋谷 LE DECO(6月15日-19日 )

脚本・演出 徳尾浩司
キャスト 堀田尋史、岡野勇、篠崎友、北川仁、鈴木規史、永塚俊太郎
舞台監督 高山隼佑
舞台美術 山崎愛子・久保大輔・金子隆一・恩地文夫
照明 中島誠
音響 とくお組
映像 岡野勇
制作 飯塚美江・菊池廣平・吉田陽子・佐藤仁美
宣伝美術 飯塚美江

Posted by KITAJIMA takashi : 10:19 PM | Comments (0) | Trackback
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