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June 01, 2004

グリング第7回公演「ヒトガタ」

 「グリング(Gring)」は地味ながら、優れた舞台をみせていると評判が高い。ぼくは昨年2月、初めてみることができました。そのときまとめたのが、以下のコラムです。残念ながら、その後は機会がありませんが、また出かけたい劇団の一つです。

◎父子の不和と和解に注ぐ切ないまなざし

 「面白いわよ。私は2回見て2回とも、よかったああ~ですから」

 芝居通の知人がこんな褒め言葉をメールで送ってくれた。その誘いに乗って、劇団「グリング」第7回公演「ヒトガタ」を見た(下北沢・スズナリ、2月21日)。家族の間に潜むわだかまりと和解のドラマが切なく、またさりげなく演じられる。初めて見る公演だったが、成熟した芝居をまたひとつ、発見した思いだった。

 舞台はちゃぶ台や座いす、二段ベッドが置かれた居間。人形職人の父親が仕事で使う作業場でもあるらしい。その雑然とした和室に、葬儀に集まった家族、親類、知人が出入りして話が進んでいく。

 何げない会話から、人形職人の息子には自殺した弟がいると分かる。弟の死にこだわる兄。身ごもっている兄の妻は、前向きになれない夫に不満を隠さない。やがて弟の遺品を収めた箱の中から、バラバラに壊された人形が出てくる。その人形は亡くなった母の面影を残し、弟が大切にしていたものだった。壊したのは父親なのか。息子は父を厳しく問い詰める。人形はなぜ壊れているのか。弟はなぜ自殺したのか…。

 家族の間がいつでも、平穏無事に過ぎていくとは限らない。派手なけんかがなくとも、気持ちの食い違いやあつれきがあって当たり前。そのもつれ合いの形が、そのまま家族の形になると言っていいかもしれない。

 グリング公演は父子の不和と和解という古典的な家庭劇を取り上げながら、新しい切り口を無理に探そうとか、大げさな身振りを求めない。そこにあるものを、あるがままに見つめるのがこの演劇ユニットの流儀らしい。作風も演技もこなれていて、しかもメリハリがある。

 例えば-。父の人形教室で学んだという若い女性が夜になって現れ、美しさとなぞが同時に居間に舞い降りるようシーン。人形販売会社の若社長が「吃音者」として登場、よどみがちな空気を言葉で攪乱する場面。緩急と振幅を織り交ぜた作劇手法は、鍛えられた演技に支えられ、舞台に陽が差すような効果を生んでいる。

 見終わってから、小説なら芥川賞より直木賞、山本周五郎の世界を思い浮かべた。映画なら山田洋次監督の描く雰囲気かもしれない。ありふれた光景にそそがれる温かくて切ないまなざし。公演にも通底する特徴のように思えた。

 「グリング」という聞き慣れない名前は、ドイツの知的障害者の施設名に由来するという。作演出の青木豪ら主要メンバーは演劇集団「円」の関係者が多い。芝居好きの評価が高い集団になりそうだ。
(北嶋孝@ノースアイランド舎、下北沢・スズナリ 初出「月刊ばんぶう」2003年4月号)

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劇団☆新感線「七芒星」

 劇団☆新感線が評判になってから10年以上経つでしょうか。いまはすっかり人気劇団になりました。なんの気まぐれか、2002年の暮れ、4800円を払って赤坂ACTシアターの立ち見でみたのが「七芒星」でした。当時書いた雑誌のコラムを以下、転載します。

◎ヘビメタ伴奏付きの大衆演劇

 大衆演劇というジャンルがある。梅沢富美男の兄が座長を務める梅沢武生劇団や筑紫劇団、玄姫劇団、藤川劇団などが比較的知られているだろうか。絵に描いたような勧善懲悪と義理人情の筋書き、泥臭い演技、地方巡業が多くて家族ぐるみも珍しくない…。といえば想像がつくだろう。 東京・赤坂ACTシアターで劇団☆新感線の「七芒星」公演を見たとき、久しぶりに大衆演劇の雰囲気を感じた。音楽はハードロックかヘビメタかという大音響で照明もきらびやか、会場も広々して舞台は遠くに見えるから大衆演劇にはほど遠いと思われるかもしれない。元光genjiの佐藤アツヒロと、最近はすっかり芝居づいている女優の奥菜恵をゲストに迎えているところも大違いだが、ド派手な化粧と衣装、勧善懲悪の分かりやすい物語に踊りと歌が付くのは大衆演劇そのもの。ひとことで言うと、ヘビメタ伴奏付きの今風大衆芝居という趣だった。

 その昔、世界を支配しようとした女魔術師を七人の勇者が退治した。そのリーダーの子供が佐藤アツヒロ、世界を守ろうとする女王の化身が奥菜恵という配役である。

 押し込められた鏡の世界から女魔術師がよみがえり、かつての勇者七人を味方に付けて現れる。奥菜が持っている「虹のしずく」を奪って世界支配を完全なものにしようとするのだが、佐藤ら勇者ゆかりの新しい七人が奥菜を守って戦う-。善と悪、勇者と裏切り者の戦いの末、善と勇者が勝利する。てらいもためらいもない一本道の筋立てである。

 スピーディーなアクション、殴り合い、蹴り合いの音も会場いっぱいに響く手際よさ。ドタバタしたギャグも適度に泥臭く、ぼけ役を要所に配した演出もツボを心得ている。

 中島かずき作、いのうえひでのり演出のコンビで作り上げる新感線ワールドはおゲイジュツには見向きもせず、ひたすら客席サービスに徹した浪速の芝居である。このところ「いのうえ歌舞伎」と称しているのも、舞台をみるとうなずける。

 1980年、大阪芸術大学舞台芸術学科の4回生を中心に、つかこうへい作品「熱海殺人事件」で旗揚げしたから20年余の活動歴がある。途中でつか作品と決別、ヘビメタ伴奏付きの劇画チックな作風に転換して観客が増えたという。年末の東京公演全19回はいずれも満席。若い女性の熱気でむせかえるようだった。年明けの大阪、新潟公演も好評という。人気は当分続きそうだ。

(北嶋孝@ノースアイランド舎、2002年12月27日 赤坂ACTシアター、初出「ばんぶう」)

Posted by : 11:19 PM | Comments (0) | Trackback
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